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二歩前を歩く/石持浅海 ★★★★☆

最初の異変は、脱ぎ散らかして出かけたスリッパが、帰宅したときに揃っていたことだった。独身の「僕」の部屋には出入りする人間もいないのに。それから毎日、帰宅するたびスリッパは少しずつ奥の方に移動していって…。スリッパは、ひとりでに、一歩ずつ進んでいるのか!?「僕」は同僚の研究者・小泉に相談を持ちかけた(「一歩ずつ進む」)。

<人間じゃ、ない・・・>

「ナナカマド」は既読。
研究者・小泉の同僚に次々と起こる怪現象。
ほとんどが自分に原因があるからこその霊現象ということで、どうしてもオチが似通ってしまうわけですが、浴室の明かりが付いていたり、ガソリンが増えていたりなど、きっかけとなるささいな謎と真相の落差は結構楽しめます。
理系なのに柔軟な思考を持つ小泉のキャラにも好感が持てます。
お気に入りは表題作。
真相に捻りがあってゾクッとしました。
現象と原因にもう少しつながりがあればなぁ。
そして最終話の読後感の良さにホッとしました。
このシリーズ、好みです。

三階に止まる/石持浅海 ★★★☆☆

あなたの会社やマンションは大丈夫? 誰もボタンを押していないのに、必ず3階で止まるエレベーター。住民がそこに見たものは……? 奇妙な表題作はじめ、思わず背筋の凍るミステリー短編集。

<そこに「恐怖すべきもの」が
           あることだけは感じていた>


表題作と「院長室」は既読。
やっぱり石持ミステリは、SFが舞台の方がいろいろと気にならずにすんで読みやすいです。
「転校」のラストはキレがあって好みだし、「黒い方程式」の発端となる出来事は面白いのですが、だんだん夫の心理にゾッとしてきたり。
最近、アンソロジーで読んだ「ナナカマド」も面白かったので、次はホラーミステリばかりを集めた短編集を希望します。

リスの窒息/石持浅海 ★★☆☆☆


昼どきの秋津新聞社投稿課に届いた一通のメール。添付ファイルに写るのは、拘束された女子中学生だった。その後、メールが届くたびに、彼女は服を剥ぎ取られていく。見ず知らずの少女を救うため、新聞社は身代金を支払うべきなのか?前代未聞の要求を前に、必死に活路を見いだそうとする元社会部記者の細川と犯人との息をもつかせぬ攻防が始まる。(帯より)

<わたしは、破滅したくない>

タイトルはいいですね・・・。

過度なストレスがかかると自傷行為に走る編集局長と、そんな彼を腫れ物に触るかのように扱う周りの様子がコントみたいで、「警察に通報できない」という説得力が弱いと感じました。
敏腕だった編集局長をそこまで追い詰めた「外部からの容赦ない攻撃」が詳しく書かれてあれば、また違ったかも。
ロジックはそんなに気持ち悪くなかったのですが、細川と馨はやっぱりヘン。
特に、あのラストは一体どういう心理?訳がわからん。

まっすぐ進め/石持浅海 ★★☆☆☆


ぼくの彼女は、謎に満ちていた―。これはあらがえない運命だったのか。幸せを信じる男女に降りかかる、残酷な真実。書店で真剣に本を選ぶ美しい女性―まるで絵画のような光景に見とれた川端直幸。友人の紹介でその女性・高野秋と偶然にも知り合う。関係が深まる一方で、秋にちらつく深い闇は消えない。そして、ついにその正体が分かる時がやってくるのだが・・・。(帯より)

<幸せに向かって、まっすぐ進め>

酒好きが集まって謎を語り合うという『Rのつく月には気をつけよう』と似たストーリー。
最終章で謎めいた美女・高野秋の過去が明かされます。

1話目の「ふたつの時計」は珍しく納得できるロジックで満足でしたが、「いるべき場所」はもういろんな意味でムリ。
主人公カップルのあまりの行動に呆然となりながらも「この2人はそりゃお似合いだわ!」と腑に落ちました。
思考回路が理解できないので、彼らが真相を解明しても奇妙な後味しか残らないのです。
まぁ、この作品に限ってのことじゃないけど・・・。

どうしよう。そろそろ本気でついていけなくなってきたぞ。
もう卒業かな・・・。
『アイルランドの薔薇』や『月の扉』のような作品はもう出ないのかな・・・。

ガーディアン/石持浅海 ★★★☆☆

幼時に父を亡くしてから、勅使河原冴はずっと不思議な力に護られてきた。彼女が「ガーディアン」と名づけたその力は、彼女の危険を回避するためだけに発動する。突発的な事故ならバリアーとして。悪意をもった攻撃には、より激しく。では、彼女に殺意をもった相手は?ガーディアンに、殺されるのだろうか。特別な能力は、様々な思惑と、予想もしない事件を呼び寄せる。石持浅海流奇想ミステリー、開幕。(本書あらすじより)

<ほら、指切りしよう・・・>

2つの中篇のミステリ・・・というより、サスペンスですね。

誰もがガーディアンの存在をあっさり認めるのが不自然だし、動機には全く説得力がないのですが、まだ1話目は人間ドラマとして普通に楽しめたかな。
2話目のストーリーは強烈に変です。完全に血迷ってます。

ヒトコト(真相に触れています)

以下、戯言ですが真相に触れています。OKな方は【】を反転(ドラッグ)させてご覧下さい。
ガーディアン・父からガーディアン・祖父になるまでの間に、一体何があったのか?
孫の目の前であんな凄まじい殺し方を繰り返すのってどうよ、じいじ。
円の両親も「ガーディアンが憑いてることで、傲慢になったり他人を見下したりするような人間にだけはしたくない」と思って円を育てた、とあるけど、絶対失敗だよなぁ。
明らかに人間として大切な何かが欠けてるぞ、円。

あと、いくら何でも、最近知り合ったばかりの社会人女性のあだ名で「まゆまゆ」はナイ。
男も女も雰囲気を選ばず「まゆまゆまゆまゆ」・・・イラッ。

耳をふさいで夜を走る/石持浅海 ★★☆☆☆

並木直俊は、決意した。三人の人間を殺す。完璧な準備を整え、自らには一切の嫌疑がかからないような殺害計画で。標的は、谷田部仁美、岸田麻理江、楠木幸。いずれ劣らぬ、若き美女たちである。倫理?命の尊さ?違う、そんな問題ではない。「破滅」を避けるためには、彼女たちを殺すしかない…!!しかし、計画に気づいたと思われる奥村あかねが、それを阻止しようと動いたことによって、事態は思わぬ方向に転がりはじめる・・・。

<だから耳をふさいだ>

読み進めるうちに、西澤保彦さんの作品と勘違いしそうになりました。
エロ&グロ&バイオレンスな雰囲気です。

『セリヌンティウスの舟』のように、全ての登場人物が特殊なルールに基づいた思考回路をしているので、とっても困りながらの読書でした。
てっきり計画的に犯行を進めていくのかと思いきや、不測の事態により、大至急3人の女性を殺害しなくてはならないという展開は意外でした。
殺害の動機がなかなか語られないので、「もしかしてSF?」とか予想していたのですがこれもハズレ。
ある意味、SFの方がスッキリしたかも・・・。

帯によると、「意図的に」犯人の視野の狭さと身勝手さを描いたということですが、これが一番驚きました。これまでは意図してなかったのかしら。

ヒトコト(真相に触れています)

以下、真相に触れています。OKな方は【】を反転(ドラッグ)させてご覧下さい。
あらすじを読み、てっきり並木の犯罪をあかねが見破るという内容だと思ってた。
まさか、あかねが並木に襲いかかるとは。びっくりした・・・。

賢者の贈り物/石持浅海 ★★★☆☆

古今東西の古典・名作が、現代に蘇る・・・。
フイルム・カメラから、デジタル・カメラに切り替えた私に、妻がプレゼントしてくれたのは「カメラのフイルム」だった!?私がフイルム・カメラを使用していないことは、妻も知っているはずなのになぜ? (表題作・賢者の贈り物)
本格推理の新旗手が、軽妙、洒脱に古典・名作に新たな息吹を吹き込んだ意欲作10篇を収録する。


<僕は頭を抱えた。面倒くさい>

名作をモチーフにした10篇。

シチュエーションが面白いと思っていたら、えらく気恥ずかしい結論に辿り着いてしまった『可食性手紙』
真相はもはや何だっていい『玉手箱』
一番気に入った結末だけれど、藤原さんの推理が酷すぎる『泡となって消える前に』

些細な謎と真相は、このくらいの短さで語られるのがちょうど良いです。
どれもザックリとしたロジック(妄想?)ですが、『Rのつく月~』よりも違和感がなく読むことができました。
色んなキャラクターの磯風さんを楽しむのもいいかも。

君の望む死に方/石持浅海 ★★★☆☆

臓ガンで余命6ヶ月。死を告知されたソル電機の創業社長日向は社員の梶間に自分を殺させる最期を選ぶ。彼には自分を殺す動機がある。殺人を遂行させた後、殺人犯とさせない形で。幹部候補を対象にした保養所での“お見合い研修”に梶間以下、4人の若手社員を招集。日向の思惑通り舞台と仕掛けは調った。あとは梶間が動いてくれるのを待つだけだった。だが、ゲストとして招いた一人の女性の出現が「計画」に微妙な齟齬をきたしはじめた。

<これは、ある意味親心だ>

『扉は閉ざされたまま』の続編で、今回も名探偵役は碓氷優佳。
どちらかというと、『扉の~』の方が好きかもしれません。
前作では緊張感たっぷりの心理戦が楽しめたけれど、今回は退屈でした。
設定はとても面白いのに、動機は単純だし、社長と梶間の想いはしっかり通じ合っているし、2人とも冷静だし・・・。
中盤、社長の計画が狂い始めてからは面白くなったけれど、優佳への嫌悪感は増す一方。
梶間と女子社員をくっつけようとする様子にイラッとしたり。
もっと気の利いた方法があるだろうに・・・露骨なんですよね。

気持ち悪い雰囲気は漂っていたけれど、そこまでのパンチ力はないかな~と油断してたら、終盤で社長のとんでもない思惑を知ることに。
ひゃ~これは強烈だ~。

うーん・・・。きっと、ロジックだけに注目すれば楽しめるのでしょうね。
お見合い研修といい、部屋の配置といい、変な会社だな~とか。
梶間の復讐心にあまり説得力ないな~とか。
相変わらず、優佳の推理力、すごーい。←棒読み。
ええと、優佳は宇宙人ではないんだよね?とか、考えちゃいけないんだろうなぁ。

ラストは好みでした。スッキリしないけれど。

ヒトコト(真相に触れています)

以下、真相に触れています。OKな方は【】を反転(ドラッグ)させてご覧下さい。
梶間が社長に突きつけようとしていた紙片が気になっていたので、中身がチケットだと知り、な~んだ~と肩透し。
椅子動かしたのも花瓶に花を活けたのも優佳だということは(読者には)丸バレな訳だし、唯一サプライズが期待できる謎だったのになぁ。
でも、優佳の姉の子供の存在が、凶器を見つける伏線になっていたのは自然で巧いと思った。
読んでいるうちにプロローグを忘れてしまい、てっきり、優佳が犯罪を防いでハッピーエンドになるんだと思い込んでいたので、このラストはとっても満足。
結局、優佳が何をしたかったのかは不明なのですが。

温かな手/石持浅海 ★★☆☆☆


大学の研究室に勤める畑寛子の同居人・ギンちゃんは名探偵。
サラリーマンの北西匠の同居人・ムーちゃんも名探偵。
人間離れした二人は、彼らが遭遇した殺人事件や騒動を、鮮やかに解き明かす!
一風変わった名探偵とそのパートナーが活躍する、著者渾身の連作集。(本書あらすじより)


<その意味を考えれば、犯人はわかります>

評判が良いみたいですが、私は苦手でした~。

毎回、「優秀な頭脳を持った人間」の登場に違和感がありましたが、なんと今回は「優秀な頭脳を持った宇宙人」が登場。
作中に「宇宙人だから死体を見ても平気」とか「感情に疎い」とあるけれど、これまでの名探偵役の思考回路が、すでに人間的じゃないので、何も特別に感じませんでした。

真相に納得できたのは「白衣の意匠」だけかな。
「大地を歩む」なんて、もう脱力。

ギンちゃんやムーちゃんの特殊能力は、「綺麗な魂を持つ人間の生命力を吸い取る」こと。
それによって相手の寿命が縮むことはなく、カロリーを消費させたり、興奮状態を沈静化させる効果があるのです。
事件の推理には全く役に立たないので、読み進めるうちに、「宇宙人」という設定は必要だったのか?と疑問に思いましたが、ラストはなかなかグッときました。
それまでが伏線だと思えば、良いかな。

しかし・・・。
寛子の場合、食費は相手持ちでたらふく食べて、かつ太らないというメリットだらけ。
一方、北西の場合、ムーちゃんは学生なので養わなくてはならないし、いくら可愛くても恋愛感情は持てないし不公平だな~と、その点ばかりが気になりました。

心臓と左手/石持浅海 ★★★☆☆

警視庁の大迫警視が、あのハイジャック事件で知り合った座間味くんと酒を酌み交わすとき、終わったはずの事件はがらりと姿を変える。
これが、本格ミステリの快楽だ!
切れ味抜群の七編を収録。


悪評高き『月の扉』は、なぜか今でも大好きな作品。
でも、座間味くんが嫌いだったことを忘れてた・・・。
再登場かぁ・・・。

今回も安楽椅子探偵ということで、『Rの月~』と同様、全く気持ちがついていかないロジックが繰り広げられます。
どうにも説得力に欠けてて、「本当に合ってるの?」と疑ってしまうのですよね。

鮮やかだと思ったのは表題作のみ。
新興宗教とミステリって相性良いのかも。
すぐ騙されてしまう。
でも、こんな話題でよく食事ができるなぁ。

最終話「再会」では、『月の扉』のハイジャック事件の関係者が集合するのですが、細かい設定を全て忘れてました。
とにかく、主人公の従姉の訴えに「ハァ?」。
もう、因縁をつけているようにしか思えない。
この話だけ、趣が変わっていたので、何かサプライズが仕掛けられているのかと思いきや、ただ後味が悪くなっただけでした。
がっかり。

Rのつく月には気をつけよう/石持浅海 ★★★☆☆

夏美、長江、熊井は学生時代からの飲み友達。
社会人になった現在でも、機会があれば集まって飲んでいる。
そして、毎回、誰かの友達をゲストとして招き、目新しい話題などで盛り上がるのだ。
主に、ゲストの悩みを解決したり、謎の真相を見抜くのは、悪魔が裸足で逃げだすほどの頭脳を持つ長江。
小粋なミステリー連作短編集。


また出ました。石持作品でおなじみの「優秀な頭脳の持ち主」!!
もう鼻につくどころの問題じゃなくて、最初から最後までイライライライラ・・・。

表題作はアンソロジーで読んでました。
このタイトルは「カキを食べるのはRのつく月にしろ」という意味。
12ヶ月を英文で表記すると、9月から翌年の4月までの綴りにRがつく。
カキはそんな涼しい時期に食べると安全だよ、という先人の知恵とのこと。
いや~全く知りませんでした。貝類は苦手なのです。

各話にお酒と肴が出てきます。
ごく普通の肴が多いですが、そば粉のパンケーキは美味しそう。
ブランデーと合わせてみたいなぁ。
不思議に感じたのは、第2話。
ゲストがチキンラーメンを肴に飲むと聞いて、夏美たち3人が驚くのですが、
「ベビースターラーメン」が存在する限り、そこまで意外なことじゃないと思うんだけど・・・。
確かに味は濃いだろうけど・・・。

とにかく、毎回招いたゲストがふと洩らした言葉から、揚げ足を取るかの勢いで、根掘り葉掘り聞き出す行為は、あまり趣味が良いとは思えない。
この飲み会、参加したくないわぁ~。
なんでそこまで気にする??と疑問なほど、ささいな一言なんですよ。
いくら日常の謎ミステリだからと言っても、規模小さすぎ。
そのくせ、「○○(ゲスト)くんは、難しく考えすぎだよ。すべての行動に意味やメッセージが含まれていると考えていては、相手が気の毒だ。(by長江)」って。オイオイ。

優秀な長江が気に入らないのではなく、「優秀だ~優秀だ~」と幾度も褒め称える文章が鬱陶しいのですよね。
腹を立てつつ読み進めるも、推理はいたってシンプルかつ強引だし、あまり面白くない。
久々に途中で断念しそうになりました。

でも、最終話で思わぬ大仕掛けが炸裂!
いや、びっくりした!!
他のサイトでは、「非常に解り易い。バレバレ。」とあるので、引っ掛かったのは私だけ??
かなりの衝撃でした。
ラスト一行も気が利いていて、読後感はとても良かったです。
最後まで読んで良かった!

ヒトコト(真相に触れています)

以下、真相に触れています。OKな方は反転(ドラッグ)させてご覧下さい。
熊井がまさか女性だったなんて。
男2人に女1人の、しかも家での飲み会はさすがに不自然だと思ったけど・・・。
健太も変だと思わないのかな~とも、思ってたけど・・・。

きっとアンソロジーで1話だけ読んでたから、先入観があったのですよね。
健太が「熊井さん、あなたのような女性です。」って言い出した時も、
ええっ!!同性愛!?と、そこまで信じていたのに・・・。
最終話で長江がマンションを引き払うのも、結婚したからなのね。
狭い~狭い~って言われてたもんね。
てっきり、夏美と長江が良い感じになるもんだと思っていて、健太が登場した時は、
どうなるんだと心配しましたが、こういうことだったのか~。
満足、満足。

人柱はミイラと出会う/石持浅海 ★★★★☆

留学生リリー・メイスは、日本で不思議な風習を目にした。建築物を造る際、安全を祈念して人間を生きたまま閉じ込めるというのだ。彼ら「人柱」は、工事が終わるまで中でじっと過ごし、終われば出てきてまた別の場所にこもる。ところが、工事が終わって中に入ってみると、そこにはミイラが横たわっていた。「人柱はミイラと出会う」「黒衣は議場から消える」「お歯黒は独身に似合わない」「厄年は怪我に注意」「鷹は大空に舞う」「ミョウガは心に効くクスリ」「参勤交代は知事の務め」(帯より)

<僕の仕事ですか。ええ、人柱です。>

うっわ~!これは楽しい!
舞台は日本なのですが、これがちょっと変わったパラレルワールド。
基礎工事が終わるまで地下に潜る人柱や、議員の側で政治活動の補助を行う黒衣。
既婚女性が習慣とするお歯黒、厄年の間は必ず休まなくてはいけない厄年休暇。
警察に協力する鷹匠、嫌な事を忘れるためのミョウガ、そして参勤交代。

こんな風習が普通に行われている世界なので、アメリカ人のリリーと同様、読者も一話ごとに驚かされます。
でも、決してふざけている訳ではなく、それが本来持つ意味を大切にしている点に好感が持てるのです。
リリーの友人・慶子の「そうか、リリーは日本に来て間もないから知らないのね。」との言葉がとてもおかしい。
このキャラクターの設定も上手いのですよね~。
確かに変わった設定だけれど、そこから導き出される真相は明確で、ミステリとしても読み応えがあります。
途中から失速しましたが。

こういう明るい作品だと、今まで気味が悪く感じていた石持的解決策もすんなり受け止められます。
そして最終話のオチが素晴らしい!なるほどね!
ぜひ、『時効警察』のノリで映像化して欲しいです。

顔のない敵/石持浅海 ★★★★☆


対人地雷をテーマに描かれた6つの短編&デビュー作。

対人地雷にも1997年の全面禁止条約にも全く無知な私ですが、意外に楽しめました。
石持作品では動機や登場人物に共感できないことが多々あるので身構えていたのですが。
これは事件そのものが面白く、議論も簡潔で興味深いものばかりでした。
ミステリに絡めながらも、地雷の危険性や救援活動が抱える問題など、うるさくない程度に提起しているので読みやすかったです。

どれも初期の作品だということで、レベルの高さにびっくりなのですが、現在の作品で感じるモヤモヤ感もギュッと凝縮されています。
罪を犯した人物を見逃したり、素晴らしい頭脳を褒め称えたり・・・。
ほんと短編で良かった。

事件発生年がバラバラなので、1話目で殺害された人物が後で登場したりします。
時系列どおりに読むと結構キツイものがありますね。
地味ながらも『トラバサミ』が一番好きです。
1つのトラバサミで日本に(警察に対して)地雷原を再現できるという解釈が見事でした。

セリヌンティウスの舟/石持浅海 ★★★☆☆

2年前、石垣島でのダイビングツアーで遭難した6人・美月、清美、麻子、三好、礒崎、児島は、それ以降、信頼で結ばれた、かけがえのない仲間になった。
そんな彼らを突然襲った美月の自殺。
彼女の死の意味を考えるために集まった5人は、美月が飲んだ青酸カリ入りの小瓶のキャップが閉められていたことに疑いを持つ。
彼女の自殺には協力者がいるのか?


題名のセリヌンティウスとは、太宰治『走れメロス』でメロスの身代わりになった友人の名前です。
重要な役どころにも関わらず、全く名前が記憶にないなんて寂しいですね。

この作品内では、「自殺した美月=完走したメロス」、「自殺に至るまでの心境や方法を考える5人=セリヌンティウス」と例えてますが、これが上手いんだかそうでないのか。
大体、協力者がいるのでは?と疑う根拠からして、あまり魅力を感じないのですよ。
小瓶のキャップがなぜ閉められていたのか、とか、なぜ小瓶が倒れていたのかとか、私がメンバーの1人だったら、完全に見過ごしたでしょうね。
作中でも「考えすぎだって」という台詞が頻繁に出てきますが、まさにその通りだと!
あと、他殺の可能性を全く考えないのもどうか。
ミステリなので、てっきりその流れになるのだと最後まで期待しちゃいましたよ。
その不満を解消するべく登場するのが、彼らの「信頼関係」なのですが・・・。

彼らは2年前、ダイビング中に遭難し、お互い支え合った経験から、当時ほぼ初対面に近い6人が「固い信頼」で結ばれたわけですね。
死と隣り合わせの状況で手を取り合い輪になって漂流する(この輪を「舟」に例えるのは良い!)・・・そこで生まれる絆。
これは経験がない人にはあまりピンとこない状況ではないでしょうか。
少なくとも、ダイビング経験ゼロ、シュノーケリング経験1回の私に感情移入は絶対無理。

しかし、この設定が作品全体の主軸となっているので、受け入れられないと非常に辛い。
2、3ヵ月に1度、海へ行く時に顔を合わせるだけの仲間なのに、「美月はこうするはずだ」「私たちの誰かがそんなことするはずがない」と断言するのですよ。みんな。
(それほど理解してるのに、美月が思いつめていることを誰も気付かなかったのですよね・・・)
そして、協力者がいても、殺人者がいる可能性を考えない理由は、あの遭難時に心を1つにした仲間を殺せるはずがないから。
しかし、主人公の児島がこっそり仲間の1人と交際してる時点で、他のみんなも隠れてゴタゴタしているとか、疑いを持たないものかなぁ。
こんな「信頼関係」を基に「どこまで信じるんだ!」とイライラするロジックが延々続きます。

石持さんは毎回、独特の状況や動機をテーマにロジックを展開していくので、スッキリせずとも斬新さが楽しめたのですが、今回の読後感は「海で遭難した仲間の信頼関係って凄いんだなぁ」という、ただそれだけ。
『月の扉』のように、部外者の介入があればまた違ったのでは・・・。
うーん・・・次回作に期待します!

水の迷宮/石持浅海 ★★★☆☆

羽田国際環境水族館で深夜、社員である片山が不慮の死を遂げた三年後の命日、館長宛てに携帯電話が届けられる。
メールが届く度に、その内容に沿った方法で水槽に攻撃が仕掛けられていく。
そして、とうとう殺人事件が・・・。


水族館が舞台ということで、全体的に澄んだ雰囲気を感じました。
飼育員たちが展示生物をどれだけ愛しているか、仲間をどれほど大切に想っているか、がしっかり伝わってきます。
心から信頼し合えている彼らがとても羨ましく思えました。

ただ、またしても気になる点が。
まず『扉は閉ざされたまま』でも感じたのですが、探偵役を褒めすぎ。
なんだか続けて2作品読むと、鼻についてしまって・・・。
それとも、ロジックの展開に必要な設定なのかしら。
そして、これも『扉は~』同様、殺人を犯す必然性がどこにあるのかさっぱり。
それは「夢」とか「正義感」とか出せばいいってものじゃないと思うし。
確かに、大事件がなかったらインパクトに欠けていたかもしれないけれど、こういうラストにするのだったら、殺人はない方が良かったです。

そして犯行動機を知ってしまうと、登場人物の印象がガラリと。
とってもいい人だと思っていたのに、実はそうでもなかった、とか。
これはヘコみます。
夢を実現するための手段はとても許せないし。
その想いはわかるけど、方法を完全に間違ってます。
それとも、もう見境がなくなってしまっていたのか。
読んでいる間は楽しかったのですが、細かいことがいろいろ気になり、あまり良い読後感ではなかったです。
著者の写真を見て、「ああ、やっぱり男性だったんだなぁ」と再確認。
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 2005年8月~

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