スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夜の底は柔らかな幻/恩田陸 ★★★★☆

特殊能力を持つ“在色者”たちが、“途鎖国”の山深くに集まる“闇月”。殺戮の風が、次第に暴れ始める―。殺人者たちの宴が、幕を開ける。

<ここは黄泉の国>

さすがさすがの恩田ワールド。
今回も様々なファンタジーを堪能しましたが、なにより「目からゴボウ」というのが異様に印象に残りました。

これまでの作品と同様、「謎」のばらまき方が絶妙で、世界観や用語などまったく解らないままストーリーが進んでも、ガッチリ心を掴んで話さないのですよ。
上巻は一気読みの面白さでした。
ただ、在色者の能力がハッキリしないため、「あ、傷は治せないのね」とモヤモヤしたり、もう少し、頭脳戦っぽいほうがワクワクしたのになぁ、など不満もアリ。
あと、舞台のスケールが大きすぎて、登場人物個々の目的がちっぽけに感じてしまったのが残念。
特に、実邦が山を目指す理由がねぇ。
公私混同は別として、ライフル抱えていくんだから、もっとヒドイ目に遭ったのかと。
上巻の出来事からして、葛城に復讐する理由の方がよっぽど強いと感じたのですが。
神山の起こした事件といい、その辺りの事情がサラッと描かれているので、最後まで共感できないままでした。

下巻は残りのページ数を確認して、絶対に伏線を回収する気がないよね恩田さん、と予想した通りの結末でした。
でもまぁいつもの読後感なので、そこに不満はありません。
十分楽しませてもらいました。
なんだかんだで、あの2人の結末には少しホッとしてしまった・・・ごめんよタミさん。
葛城もあんなに実邦に執着してるのに、16年もよく放っておけたなぁ。

夢違/恩田陸 ★★☆☆☆

夢を映像として記録し、デジタル化した「夢札」。夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章は、亡くなったはずの女の影に悩まされていた。予知夢を見る女、結衣子。俺は幽霊を視ているのだろうか?そんな折、浩章のもとに奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する集団白昼夢。狂乱に陥った子供たちの「夢札」を視た浩章は、そこにある符合を見出す。悪夢を変えることはできるのか。夢の源を追い、奈良・吉野に向かった浩章を待っていたものは―。人は何処まで“視る”ことができるのか?

<夢は外からやってくる>

SFの設定にいまいち惹かれませんでした。
「夢判断」や「夢札」などのワードも、恩田作品にしては新鮮味を感じず。
数年前までは『きのうの世界』のような伏線放置状態でも楽しめたのに、私がだんだんストーリーを重視する方向に寄っているのかなぁ。
全体的に恩田さんの持つ「恐怖のイメージ」が羅列しているだけの印象で、読後は物足りなく感じてしまいました。(正直、『ミスト』っぽいシーンには冷めました。)

私の家では何も起こらない/恩田陸 ★★★★☆


この家、あたししかいないのに、人がいっぱいいるような気がする・・・。小さな丘の上に建つ二階建ての古い家。この家は、時がゆっくり流れている。幽霊屋敷と噂されるその家にすむ女流作家は居心地のよいこの家を愛している。血の海となった台所、床下の収納庫のマリネにされた子どもたち・・・いったいこの家にはどんな記憶が潜んでいるのだろう。

<―そうだ、それほど、ここは生々しい>

恩田作品の魅力満載。

お気に入りは、乙一っぽい雰囲気の「私は風の音に耳を澄ます」、会話のセンスが光る「あたしたちは互いの影を踏む」、哀しいストーリーだけど読後感の良い「素敵なあなた」、少しずつ歪んでいく「私の家へようこそ」
「俺と彼らと彼女たち」は、少しテイストが異なっていてホッとします。

あ、附記は無くてもいいかな。

訪問者/恩田陸 ★★★☆☆

山中にひっそりとたたずむ古い洋館―。
三年前、近くの湖で不審死を遂げた実業家朝霞千沙子が建てたその館に、彼女が育てた映画監督峠昌彦が急死したため、朝霞家の一族が集まる。
晩餐の席で公開された昌彦の遺言によると、孤児だったはずの昌彦の実父がこの中にいるらしい。
一同に疑惑が芽生える中、冬雷の鳴る屋外で見知らぬ男の死体が発見される。


<来客を告げるベルが鳴った>

次々と現れる訪問者や警告文、千沙子と昌彦の死の原因、そして新たに発見された死体など、増殖する謎や疑惑がどう展開していくのかはとても魅力的で、真相にもスッキリ納得です。
でも、何か物足りないような印象・・・。
キャラクターに魅力が感じられないのも一因かな。
これが味なのでしょうが、老人の老人っぽくない言葉遣いがだんだんストレスに感じ始めました。
小野寺の存在といい、舞台化すると違和感がなさそうですね。
同じ雰囲気の『木曜組曲』は大好きな作品なので、これは『白光』の後に読んだのが失敗だったのかも。

ブラザー・サン シスター・ムーン/恩田陸 ★★☆☆☆


ねえ、覚えてる? 空から蛇が落ちてきたあの夏の日のことを―
本と映画と音楽・・・それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。『夜のピクニック』から4年、恩田陸が贈る、青春小説の新たなスタンダードナンバー誕生!


<最後まで、とりとめなかったねえ>

うう~ん・・・本当にとりとめない・・・。
第一部の思わせぶりなフリに脱力しました・・・。
恩田さんと同じ世代の読者なら楽しめるのかなぁ。

きのうの世界/恩田陸 ★★★★☆


失踪した男は遠く離れた場所で死体となって発見された。
塔と水路の町にある「水無月橋」。
霜の降りるような寒い朝、事件が起こる。
バス停に捨てられていた地図に残された赤い矢印は・・・?
恩田陸待望の新刊。(amazonより)



<それは、なぜかひどく不吉なイメージに思えた>

久しぶりの恩田さんの長編です。
帯に「誰も予想できない結末が待っている!!」とありますが、本っ当~に予想外でした。
恩田作品でこういう真相って珍しいんじゃないかなぁ。多分。

新聞に連載されていたということで、各章はとても短いです。
全ての章に「~の事件」というタイトルが付いてますが、事件というより「謎」ですね。

1年前に失踪したまま、遠く離れた町で死んだ男にまつわる謎。
彼は何の目的でこの町に来たのか?
生前の不可解な言動は一体?

住民の回想や証言で男の人柄や行動が明らかになり、短いけれど意外な展開でグイグイ読ませます。
独特の二人称が苦手で、事件を調査する「あなた」の正体が判明するまでは読みにくかったなぁ。
お気に入りは「溺れかけた猫の事件」「川沿いに建つ洋館の事件」

「仕掛け」には本当に驚いたし、そのシーンが目に浮かぶようで圧倒されました。
再読すると腑に落ちない点が続々と出てきますが、細かいことを考えなければなかなか満足度の高い作品だと思います。

ヒトコト(真相に触れています)

以下、戯言ですが真相に触れています。OKな方は【】を反転(ドラッグ)させてご覧下さい。
特殊能力や不思議な現象が出てくるので、真相もSF風(塔が凶器とか?)なのかなと思っていたのだけど、町が水に浮いているというまさかの物理トリック(?)にびっくり!
その橋だけが木製だったり、塔の役割が「水抜き」で、その場所に誰も住まないようにするためだったのも巧いなぁ。
でも、なぜ住民に秘密にしないといけないのか、その危険性にはピンとこなかった。
共同体がどーのこーのって。
「水に浮く町」とかって有名になりそうなのに・・・。ポジティブすぎる?

第18、19章は、別に修平の考えた物語ではないよね?
(第17章の終わりで「さぁ、修平。考えるんだ」ってあるからさ。)
それを前提に疑問点をメモしておこう。

・ずっと気になっていたんだけど、吾郎がコンビニで買った封筒と筆ペンの意味は?ナシ?
・結局、吾郎の会社が葬儀を仕切ったのはなぜ?
・例の道に落ちてた地図について、中学生が書いたものだったら、華代以外の指紋が見つからなかったのはなぜ?
・犬が偶然地図を咥えて運んだのなら、予行演習だとされた双子の家のハンカチの意味は?
・駅員が見た新村家の女の子が持っていたピンクの鞠は、どうやって先生の手に渡ったの?
・ステンドグラスの天の川の意味は?
・塔に結んだ赤い糸は?

とにかく、吾郎は町の秘密を知った上で移住したんだよね?
「カマをかけた」ってあるけど、喫茶店の鏡を見て驚愕したのも演技ってこと?
そういった様子にいちいち期待させられたので、色々とガックリなんだけど・・・。
最初は記憶力が抜群という設定だけだった吾郎が、後半に向けてどんどん進化していくのも不自然だったなぁ。
何だか、最初は「殺人」のつもりだったけれど、連載が進むにつれ、「事故死」に変更した結果、辻褄が合わなくなっちゃったみたいな。
栄子の死や吾郎の弟の存在も必要性があったのか微妙。

不連続の世界/恩田陸 ★★★☆☆

音楽ディレクター塚崎多聞のフランス人の妻ジャンヌが突然、里帰りし、そのまま音信不通になって、そろそろ一年になろうとしていた。多聞はジャンヌの実家を訪ねたが妻はおらず、家族は「いまヨーロッパ中を旅していて連絡が取れない」と言う。多聞は途方にくれ、奇妙な別居生活は続いた。そんなとき三人の友人が多聞を「夜行列車で怪談やりながら、さぬきうどんを食べに行く旅」に誘う。四人はそれぞれ怖い話を披露し合うが、途中、多聞の携帯電話に何度も無言電話がかかる・・・。(帯より)

<怖い話はこんなふうに語るものだ>

『月の裏側』の塚崎多聞が登場するので、長編だと思ってたら短編集でした。
多聞はいい人なんだけど、優柔不断っぽくてあまり好きじゃない・・・。
トラベル・ミステリーなのですが、ミステリっぽさはあまりないかな。
どれもゾッとするけれど後を引く怖さではないので、少しパンチ力不足に感じました。
それが恩田さんらしいのですがね。
お気に入りは「夜明けのガスパール」
これだけ少し異色で印象に残りました。

猫と針/恩田陸 ★★★☆☆


友人の葬式の帰り、久々に学生時代の仲間が集まった。噂によれば、仲間たちはみな、何らかの個人的事情を抱えているらしい。一見なごやかな宴だが、それぞれが諸事情で少しずつ席を外す間、残った人間は様々に憶測を巡らし、不在の人物について語り合う。やがて漂う不穏な空気・・・。噂はどこまで本当なのか?
そして、この集まりの本当の意図とは?(帯より)


<人は、その場にいない人の話をする>

『猫と針』は、2007年に「演劇集団キャラメルボックス」のために書き下ろした、初の戯曲とのこと。
本書は、その台本を基に単行本化したものなので、ほぼ登場人物の会話だけで物語が進みます。

少人数の密室劇という恩田作品でよく見られるテーマで、『中庭の出来事』と『木洩れ日に泳ぐ魚』を足したような雰囲気。
テンポが良く、読んでいる間は面白いのだけれど、少々インパクトに欠けるかな。
とても短いし、小説としては物足りないというのが正直な感想です。
でも、5人の登場人物がそれぞれ抱えている事情や状況が次々と明らかになる様子はスリリングで、芝居では見応えがありそう。

恩田作品は、そのままでも舞台化できそうなイメージがあったのですが、あとがきに、小説と戯曲は全く違い、とても苦労したと書いてあって、意外でした。

いのちのパレード/恩田陸 ★★☆☆☆


ホラー、SF、ミステリ、ファンタジー・・・あらゆるジャンルに越境し、読者を幻惑する恩田マジックがひときわ冴える15篇。
恩田版<異色作家短篇集>ここに誕生!


<あれはあの時、あの場所での善だったのです>

う~ん・・・これは苦手かな~。
恩田さんの感性についていけませんでした。
ほとんどの作品に対して、「発想がスゴイ!」という驚きよりも、オチが無いことへの脱力感が上回りました。
何とか楽しめたのは、「観光旅行」「エンドマークまでご一緒に」「SUGOROKU」。
残念ながら、心に響くものはありませんでした。

木洩れ日に泳ぐ魚/恩田陸 ★★★★☆


<木洩れ日が綺麗。ここはまるで海の底みたい。>

とても切ないストーリー。
私は、恩田さんの恋愛観にかなり共感できるのです。
大好きな『ライオンハート』を超えました。

2人の「謎」の応酬にハラハラドキドキ。
先がまったく読めないし、謎はどんどん増えていくし。
恋愛が絡んで、もうスリルたっぷり。修羅場の連続。
後半のあまりの展開に、ぎぇ~っと驚愕したり。
そして、終盤、ある真相が判明した時の彼女の心の変化が絶妙なんですよね。
巧い。巧すぎるよ、恩田さん。

想像だけで解決してしまう謎に少々戸惑いましたが、過去からの解放をイメージさせるラストシーンはとても綺麗でスッとしました。

ヒトコト(真相に触れています)

以下、真相に触れています。OKな方は【】を反転(ドラッグ)させてご覧下さい。
千浩と千明が恋人同士ではなく、双子のきょうだいだった、というサプライズにやられました。
転落死した男が2人の父親だった、という事実と同時に明かされるのがいい。

きょうだいなのに、愛してしまった。
その事実に苦しむ千明が、実はきょうだいではなくいとこだったと判った途端、千浩への愛が冷めるあたり、驚きと同時に「わかる!!」と感じました。
せっかく障害がなくなったのに・・・。
人の気持ちって複雑なんですよね。

千明が想像する父親の死の真相は、少々蛇足気味かも。
いとことの入れ替わりという真相が衝撃すぎて、すっかり忘れてしまってたよ。

朝日のようにさわやかに/恩田陸 ★★★★☆


『図書室の海』以来、5年ぶりの短編集。
ホラー、ミステリ、SF、ショートショート、奇妙な世界が満喫できます。

『水晶の夜、翡翠の朝』
『ご案内』
『あなたと夜と音楽と』 DJ同士の会話ミステリ。設定に惹かれます。
『冷凍みかん』 どうしてこんな発想ができるのか。
『赤い毬』
『深夜の食欲』 これは恐怖。ゾッとします。
『いいわけ』 モデルが誰なのかさっぱりなのですが。
『一千一秒殺人事件』 シュールです。ラストは笑ってしまいました。
『おはなしのつづき』 結末がただただ切ない。でもあったかい。
『邂逅について』
『淋しいお城』 ミステリーランドの予告編。これが本編でもいいと思うくらい、よく出来たお話でした。
『楽園を追われて』 こういう仲間っていいなぁ。懐かしさが漂います。
『卒業』 スプラッタホラー。説明が一切ないのに、なんでこんなに迫力があるんだろう。
『朝日のようにさわやかに』 全く別のエピソードが互いに繋がっていく様が面白いです。

帯に「この一冊で恩田陸の作品世界が一周できる!入門書としても最適。」とありますが、本当に恩田作品の魅力が凝縮されています。
贅沢な一冊でした。

チョコレートコスモス/恩田陸 ★★★★☆


<ひょっとして、今、
何か凄いものを見ているのかもしれない>


読み始める時間帯を間違えたため、晩ご飯抜きで没頭しました。面白すぎて止まらない!

物語のテーマは舞台劇。
求められる芝居はどれも一筋縄ではいかないものばかりで、役者がどういう解釈をし、機転を利かせるかが見所なのですが・・・。
これが素晴らしい!
活字だなんて嘘でしょ?と思わせるくらいの臨場感!
それぞれの役者の情熱や、飛鳥の芝居を目にした劇団員や業界人の驚きが、これでもかと伝わってきて、終始ゾクゾク痺れっぱなしです。

女優にとって恵まれた環境に育ちながらも不安を抱えている響子と、突出した才能を持ちながら、その自覚がない飛鳥。
私も『ガラスの仮面』にハマっていたので、あの興奮を思い出してしまいました。
漫画も素晴らしいですが、小説でこれほどの迫力を出せるなんて・・・さすが恩田さん!
しかし、飛鳥はマヤ、響子は亜弓・・・と、ここまでは良いのですが、響子の親戚・葉月のイメージがどうしても寺島しのぶさんなんですよね。
飛鳥の才能はとても魅力的なのですが、響子に比べると内面が少し掴みにくかったかな?
彼女がもっと貪欲になっていく姿も見たかったですね。
2人はこれから「紅天女」を目指すのでしょうか。

蛇行する川のほとり/恩田陸 ★★★☆☆

あの夏の日、少女たちは川のほとりにある「船着場のある家」で合宿を始めた。
夏の終わりの演劇祭に向けて、舞台背景の絵を仕上げるために。それは、楽しく充実した高校生活の最高の思い出になるはずだった。ひとりの美しい少年の言葉が、この世界のすべてを灰色に変えるまでは・・・。
そして、運命の歯車は回り始めた。
あの遠い夏の日と同じように。(帯より)


帯のあらすじや序盤の雰囲気がとても幻想的だったので、まさかこんな物騒な事件を中心に話が進むとは思いませんでした。
ミステリ?ミステリなの?と少し不安に。

第1、2部のラスト、急展開の兆しをチラリと覗かせる手法が巧い!
もう先が知りたくて一気読みです。
各章ごとに出版されたということですが、私なら次巻を待つのに耐えられなかっただろうなぁ。

香澄と芳野は、なぜ合宿のメンバーに毬子を選んだのか。
月彦から毬子への忠告の真意とは。
暁臣が知っている毬子の秘密とは。
そして、あの夏の日、一体何が起こったのか。

新しい事実が次々と発覚し、ワクワクします。
語り手が変わるたび、謎の焦点が少しブレてしまったようにも感じましたが、叙述トリックっぽい仕掛けには素直に驚きました。
真相も綺麗にまとめられていて満足です。

終章がとても良かった。
ずっと彼女の想いが知りたかったのです。

久しぶりに耽美な世界を満喫しました。

蒲公英草紙/恩田陸 ★★★★★


<たんぽぽの綿毛が風に運ばれていく未来。
それがどんなものかは見当もつきませんでした。>


もう・・・素晴らしかったです。
『光の帝国』でボロボロに泣いてしまったため、この続編を読むのに相当な覚悟が必要でした。
しかし、読んで良かった・・・!

20世紀初頭、静かな農村地帯が舞台。
医者の娘である峰子は、名家槙村家の病弱な末娘・聡子の話し相手を頼まれる。
そして、峰子は対面した瞬間から、美しく聡明な聡子に惹かれていく。
そんなある日、謎の一家4人が槙村家を訪ねてくる。
彼らは「常野」だった。

峰子の穏やかな語り口がとても心地良いです。
静かで美しい風景がふんわりと思い浮かぶようでした。
しかし、読み始めから既にうっすらと涙が・・・。
終盤の展開に対する予感があったのかもしれません。

椎名と永慶の絵に対する聡子の評や、聡子と常野の姉弟との出会い、秘密の場所での峰子と廣隆の語らいの場面。
恩田作品ではその表現の見事さにしばしば鳥肌が立つのですが、今回は終始その状態が続きました。
自分が峰子と同化したかのように、彼女の驚きやとまどいを感じることができるのです。

クライマックスでの、聡子の行動と槙村家当主の温かい笑みに、常野一族とそれを支える人々の宿命の重さを感じて涙が止まりませんでした。
「戦う」ためではなく、「救う」ための力。
聡子の「ありがとう」の意味がわかった瞬間、さらに号泣。

安直な展開を選ばず、敢えて現実を突きつける結末にも胸を衝かれました。
椎名が予言した「地獄」の中で、峰子の最後まで穏やかな、しかし強い訴えが心に響きます。

ネクロポリス/恩田陸 ★★★☆☆



<知ってるぞ、この効果音はアズキを箱の中で転がすんだよな?>

<誰かが外でアズキ転がしてるっていうのっ>


相変わらず、恩田ワールドは魅力たっぷり。

ただ、今回は序盤からではなく、いつの間にか引き込まれていたという感覚です。
珍しく、V・ファーやアナザー・ヒルのイメージをつかむのに時間がかかりました。
見開き一杯の登場人物は、いっそのこと、「ドミノ」みたいにイラスト付きにして欲しかったかも・・・。

卵が「特別なモノ」と言われると、とても神秘的に思えてくるから不思議。
他にも『夜のテーブル』や『ガッチ』などのイベントが、最高にツボです。
よくこんなアイディア思いつくなぁ。
そして、ジュンが『ガッチ』に参加するシーンは、もうドキドキ。
何も後ろ暗いことなど無いのに、「八つ裂き」の制裁を考えると不安に襲われるジュンの気持ちがとても伝わってくるのです。

V・ファーには日本の神事などがいくつか伝承されていて、民俗学に詳しいジュンが事あるごとに「それは日本でいう○○だよ!」と興奮しながら叫ぶのですが、これがもうさっぱりで。
せっかく日本に住んでいるのに・・・もったいない。

油断したころの凄惨な描写に驚いたり、連続殺人犯の正体にのけぞったり、相変わらず、展開の速さはお見事!
圧倒的なリーダビリティで、ページを捲る手が止まりません。
各所、軽くユーモアも交えていて、何度か声を出して笑ってしまいました。

ヒトコト(真相に触れています)

以下、真相に触れています。OKな方は【】を反転(ドラッグ)させてご覧下さい。
ただ、あまりの壮大さに、どうしてもラストで収拾しきれなかった感が・・・。
上・下巻合わせて800ページの超大作でありながら、物語のシメの部分がとても短いのです。
対決シーンなどの盛り上がりも期待していただけに残念で・・・。
(終盤の、あの3人の行動は結局何だったのか・・・。)
最新記事
検索フォーム
記事一覧

 2005年8月~

カテゴリ
プロフィール

Author:めみ
FC2ブログへようこそ!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。