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作家小説/有栖川有栖 ★★★☆☆


作家だらけの連作小説。
ミステリではありません。


『書く機械』
ここまで極限状態に追い込まれると、却って書けなくなるものなんじゃ・・・?
その点は、編集長の人を見る目があったということかしら。
ラスト、引き返せなくなった姿が憐れです。
『殺しにくるもの』
一番、面白かったです。
犯人の特徴も、一層恐怖を煽ってます。
ラストもびっくり!
こういう趣向は大好きです。
『締切二日前』
もう、作家の苦悩と焦燥感がひしひしと伝わってきます。
作中で、他の作品に使えそうなアイディアを惜しげもなく披露してますが、結構面白いのもあるのにもったいない~。
オチもすっきり。
『奇骨先生』
少し青春小説っぽい雰囲気でした。
「先生、そりゃなんでも大人気ないよ」と、思わなくもないですが結構爽やかな読後感でした。
『サイン会の憂鬱』
私はサイン会に並んだこともないし、遭遇したこともありません。
この作品も多種多様の人々が並んでいて、それがなんともリアルで面白かったです。
終盤に近づくにつれて、ガラッと雰囲気(ホラー??)が変わってしまうのですがこういう毒気も良いですね。
『作家漫才』
作家2人の掛け合いが面白い~。
「歌手は同じ曲を何度もテレビで唄えるのに、作家は同じ作品を何度も発表できない」
「歌手は舞台の上で客の反応をじかに味わうことができるのに、作家は孤独に部屋で作業するだけ」
など、卑屈な発言が飛び出します。
有栖川さんはいつもこんなこと考えてるのかしら?
『書かないでくれます?』
ああ~怖い怖い。
「金魚」のエピソードがゾーッとします。
ラストの不安感がたまりません。
『夢物語』
ずっと覚めることのない夢のお話。
「マクベス」を「マルヘ王」、「ローマの休日」を「王女の休日」と題名を変えることで、主人公の罪悪感が伝わってきます。
ラスト一行がとてもシュール。
こうなるとは思っていましたが。

弁護側の証人/小泉喜美子 ★★★★☆


八島財閥の放蕩息子・杉彦に見初められ、玉の輿に乗ったストリッパー、ミミイ・ローイこと漣子。
『遺産狙い』という中傷をされながら毎日を過ごす中、八島家当主の龍之助が殺害される。
まさか夫の杉彦が犯人!?
必死の調査を続ける漣子と仲間たち。
新たな弁護側の証人は見つかるのか?


ストーリーは、漣子の一人称と三人称の交互で回想を挟みながら進みます。
屋敷の雰囲気や漣子に対する使用人の態度などが本書で語られている通りヒッチコックの「レベッカ」を連想させ、全編に不穏な空気が漂っています。
その反面、漣子の支えになってくれるエダや清家弁護士のキャラがいい味を出していて緩和剤になっているのですが。
警部補も涙の決断ですね。素晴らしいです。

そして真相。
いや~もう~見事に騙されました!!
大きな「ひっかけ」があると知っていたので、とても注意深く読み進め「あんなトリック」や「こんなトリック」の可能性を考えていたのですが・・・。
真相解明のくだりになると「・・・へ!?」。
再読して「えええええ~!!」。
初読時は何の違和感も無かったのですよ。
とっても「巧い」です。やられました。
これが40年ほど前に出された作品だなんて・・・。
そして全てにおいて「フェア」なのです。
これにまた、びっくりです。

山伏地蔵坊の放浪/有栖川有栖 ★★★☆☆


毎週土曜の夜にスナック『えいぷりる』に集まる常連客。
彼らの楽しみは、昨年からこの町の寺に寄宿している山伏の経験談(?)を聞かせてもらうこと。
その事件の謎をみんなで考えるのだが・・・。


なんと、主人公は山伏!
ご丁寧に、各章のはじめには山伏についての説明書きもあります。
彼は地方を旅する中、数々の事件に巻き込まれるのですが、これがどれも不思議なものばかり。
私も客になったつもりで考えましたが、真相は全く見当がつきませんでした。
思わずのけぞりそうになるトリックが多いのですが、のほほんとした山伏のキャラのおかげで許せてしまいます。
山伏がなりゆきで仮装パーティーに出席するのには笑いました。
日常では浮いているハズの格好がとてもしっくりくる場なので、誰も本物の山伏だとは気付かない(笑)。

山伏自身が疑わしい存在なので、もちろんそれらの話も眉唾モノ。
常連客もそれを理解しているのですが、巧みな話術を楽しんでいる雰囲気がとても微笑ましいのです。
こんなスナックやバーの常連になりたいと、つくづく感じました。

マスターの鋭い一言も良いカンジです。

孤島パズル/有栖川有栖 ★★★☆☆

江神とアリスは、推理小説研究会唯一の女性部員であるマリアの伯父有馬竜一の別荘へ招待される。
その目的は、別荘のある島に仕掛けられたパズルを解いて、彼女の亡くなった祖父がダイヤモンドを隠した場所を探し当てることだった。
しかし、そのパズルを解く間も無く別荘で殺人が起き、江神たちは調査に乗り出す。


学生アリスシリーズ第2弾です。
先に「双頭の悪魔」を読んでいたので、活発で明るいマリアに驚きました。
そりゃ、こんな事件に巻き込まれたら落ち込むでしょうね。

意味ありげな地形の島、所々に建てられているモアイの謎、そしてクローズドサークル。
とても魅力的な設定です!
「月光ゲーム」よりもワクワクしました。
そして、やはりミステリ以外の読み物としても楽しむことができます。
アリスとマリアのちょっと青春小説っぽい雰囲気も、今回は(!)とてもいい感じだし。
マリアのキャラのおかげですね。

モアイの謎の解明も「ふむふむふむ」と読むだけの私は、今回の「読者への挑戦」もそのままスルー。
それでも「え~、ここまでで犯人を示す手掛りが全部出てるの~?」と、毎回驚きます。
そして、江神の論理で「真相はこれしかない!」ところまでもっていってくれるのです。
ここまでスッキリとした後味のミステリを最近読んでいないなぁ。
しかし、最初の部屋割り表やダイイングメッセージはあまり必要がないような。
そこに何かトリックがあるのかと身構えてしまいました。

北村薫さんの解説がとても的確で可愛らしいです。
「有栖川さんは犯人に意外性をもたせようとしない」とのこと。
その分、真相を明らかにするための論理に重点を置いているのですね。
犯人に少し物足りなさを感じていたのですが、あらすじを読んで納得しました。

やはり長編は読み応えがあって良いなぁ。

魔王/伊坂幸太郎 ★★★☆☆

思いがけない「力」を手にした兄弟の物語。

想像していたストーリーとは違っていました。
もっと近未来が舞台だと思っていたのですが、環境汚染、病原菌による輸入規制、失業率の悪化、北朝鮮の核の保有など、身近な問題がどんどん提示されています。
うん、これは一緒に考えないといけない。
他人事ではなく、一人ひとりの意識が大切だ。
・・・とは思うのです。しかし・・・。

兄を、共感しにくい極端な人物に設定しているせいか、とても読むのが辛かったです。
それどころか、恐怖を感じてしまいました。
<でたらめでもいいから、自分の考えを信じて対決していけば世界が変わる>
兄の信じる「考え」が一体何だったのか、政治家・犬養を何でそこまで恐れるのかが理解できない。
ただ「ファシズム」だと決めつけ反対してるだけで、結局、兄が世界をどう変えたいのかが、全く伝わってこない。
しかも、「でたらめでもいい」って。
こちらの方が危険思想なのでは。

アンダーソンに降りかかる災いや、ムッソリーニと恋人の終焉のエピソードなど、「ファシズム」の恐ろしさや、それに抗する勇気も描いてあるのはとても効果的だと感じました。
それと対照的な蝋燭のエピソードも。
ここで「統一された行動」の是非を問われることになります。
そして、兄の思想の貧弱さも浮き彫りになります。

世界をどう変えるべきか、など私たちが考えるきっかけになるための作品だと思えば、よく出来ているのかもしれません。
そのための「考えろ考えろ」でしょうし。
彼らは「流されている」私たちに対して警告を発しているのですね。
それでも、私の読後感は「犬養のような政治家が出てきて欲しい」なのですが・・・。

この兄弟を「魔王の恐怖を父親に訴える子ども」に例えるにしても、やはりそれが本当に「魔王」なのかどうかわからない。
ただの「霧」や「枯葉の音」なのかもしれない。
それよりも、具体的な反論も持たずに漠然と力を使う彼らの方が、よほど「魔王」に思えました。

背の眼/道尾秀介 ★★★★☆

ホラー作家の道尾は、旅先の白峠村の河原で「レエ オグロアラダ ロゴ・・・」という不気味な声を聞く。その言葉の意味に気付いた道尾は、「霊現象探究所」を構える友人・真備に相談する。その真備のもとには、被写体の背中に2つの眼が写る4枚の心霊写真が届いていた。それらはすべて白峠村周辺で撮影され、後に彼らは全員が自殺しているという。未解決の児童連続失踪事件、自殺者の背中に現れた眼、白峠村に伝わる「天狗伝説」。これらに隠された真実とは・・・?

第5回ホラーサスペンス大賞・特別賞受賞作。

ホラーは苦手なのですが、綾辻さんが「意欲的な本格ミステリ」と評されていたので、手に取ってみました。
確かに、序盤はバリバリのホラーテイストです。
特に、「レエ・・・」の不気味な声の意味するところがわかった時は衝撃を受けました。
その答えの見せ方がとても上手で、思わずゾッとします。
しかし、おどろおどろしいのはここまで。

「霊現象探究所」の所長である真備と助手の凛が登場すると、ホラーの雰囲気が一変します。
キャラの設定が京極作品に似ているとの指摘がされているようですが、そう言われてみれば。
もちろん、本書の方が薀蓄やら何やら軽めなのですが。
文体や構成などが私にはぴったり。
次々に現れる謎を少しづつ明らかにしていく手順や、意味ありげな伏線が気になってページを捲る手が止まらなくなりました。
ただ中盤に、いきなり犯人が明らかになるので戸惑います。
特に意外性も無いし、ここはもう少しひっぱって欲しかったんだけど・・・。
でも、ラストで犯人を追い詰めた際に、真備が行った「あること」。
これは、ちゃんと設定を活かせていて巧いと感じました。
よく考えると事件そのものが、嫌悪感を持たずにいられないものなのですが、不思議に読後感は爽やかなのです。
ホラーだということをすっかり忘れてました。

気になる点は、いろんなテーマを詰め込みすぎの感があり、一番解明して欲しかった謎が尻つぼみに終わったこと。
そう考えると、省略しても良い箇所がどんどん出てきて、冗長だという評も頷けたりします。
終盤も説明調が続きますし、ご都合主義な展開など、いかにもデビュー作という手馴れ無さも感じました。
評判もあまり芳しくないようで残念。
でも、何気に次回作を楽しみにしてます。

月光ゲーム~Yの悲劇’88~/有栖川有栖 ★★★☆☆

キャンプを楽しむため矢吹山に向かった江神二郎ら英都大学・推理小説研究会のメンバー4人は、雄林大学の男女7人グループと男性3人グループ、神南学院短期大学の女性3人グループと出会い、行動を共にすることに。それぞれのグループが親交を深める中、神南学院メンバーの小百合が突然、書き置きを残して姿を消す。その後、山が噴火し、下山が困難な状況で次々と殺人が起きる。

学生アリスシリーズ、第一弾です。
図書館を利用したのですが、その歴史を物語るかのごとく、見事にボロボロ(笑)。
ごめんね、もっと早くに手に取れば良かったね・・・と、1ページごと丁寧に捲ってみると。
・・・なんと登場人物17人!多いよ!クローズドサークルにしなくてもいいよ!
もちろん、最初に人物紹介ページが設けられているのだけど、さすが図書館本!
早速、心無い人の書き込みを発見。
作中、人物の呼称が統一されていないため、名前とあだ名が入り混じるのですが、その混乱を防ごうとしたのか、紹介ページの人物の後ろにそれぞれのあだ名を鉛筆で付け足しているのです。
その気持ちはとっても良くわかるのですが、私としては内容を全く知らないまま、そのページを見ることになるので、『そのあだ名がもしかして謎の真相(人物誤認トリックなど)だったらどうしてくれようっ』とワナワナ。
全くの杞憂だったわけですが。
このあだ名は、多すぎて書き分けもままならない登場人物を余計にややこしくさせるのに、非常に効果的でした。
かなりケチを付けてますが、全体的にはとても面白いです。
冒頭はすでに噴火に怯えているメンバーたちの描写で始まり、犯人は○○なのか・・?という疑いまで示唆されています。
これで掴みはOK!ってな具合にワクワク感が高まります。
彼らの会話やキャンプの雰囲気も楽しくて、全く退屈しません。
その後に次々起こる殺人、ダイイングメッセージ、噴火の恐怖なども、その緊迫感が伝わってきます。
もちろん「読者への挑戦」あり。しかし、いつも通り全くお手上げ。
江神の冴えわたる推理は見事です!
展開されるロジックに、逐一、驚いてしまいました。さすが!

ヒトコト(真相に触れています)

以下、自分用のメモ。真相に触れています。下の方へどうぞ。































この殺人の動機で脱力感を味わいました。
せっかくモチたちが『彼らの言動に動機に結びつくモノはなかったか』と一生懸命考えていたのに。
そんな動機、わかるわけないでしょーが。
火山による、死と隣り合わせの状況が、殺意を増幅させたのでしょうか。
あと「愛する女性を守るためならば、証拠品なんて無くしちまえ!」という、アリスの潔い行動に驚愕。
そんなことで良いのか、ワトソンよ!
私はそれを『純粋でひたむきな愛』とは理解してやれんぞ!
どうもアリスの恋愛を微笑ましく思うことができない原因はココですね。
まぁ、この殺人の動機とともに、若気の至りと言ってしまえばそうなのですが。

交換殺人には向かない夜/東川篤哉 ★★★★☆


鵜飼探偵と朱美は、善通寺咲子から「夫の浮気現場を突き止めてほしい」という依頼を受け、善通寺邸に運転手と使用人として乗り込むことに。そこで、咲子の夫である春彦の奇妙な言動を目にした2人は、独自で調査を始めるのだが・・・。一方、戸川流平は十乗寺さくらから、友人の別荘へと誘われる。その友人、水樹彩子が学生時代に監督した映画を3人で鑑賞中、妙な物音を耳にして・・・。

烏賊川市シリーズ、第4弾です。

いやぁ~すっかり油断してました!
東川さんがこのトリックを使うなんて!
いくつかの予想は的中したのですが、最後の大仕掛けには見事騙されました~。
「著者のことば」で、『作者さえ予想しなかった意外な場所に着地』したとありましたが、まさに大成功ではないでしょうか。

中盤はいつもより設定や展開が地味でもたついた印象があるのですが、それらも驚愕のラストを際立たせています。
再読して、相変わらずの伏線の巧さに「な~る~ほ~ど~」と唸りました。
レンジで2回チンした料理や、ポットでシェイクされたコーヒーなどのネタも最高!
いろんなサプライズが盛りだくさんの、贅沢な一冊です。
次回作が待ち遠しい~。

彼女は存在しない/浦賀和弘 ★★★★☆

香奈子は駅前で見知らぬ女の子にいきなり「失礼ですけど、アヤコさんではないですか?」と話しかけられる。彼女は由子と名乗り、子供の頃仲良しだった亜矢子という友達に、香奈子がよく似ていたのだと語る。一方、大学生の根元有希は、母親が亡くなって以来、以前にもまして部屋に引きこもっている妹の亜矢子に頭を悩ませていた。ある日、突然朝帰りした亜矢子に理由を聞くが、本人にもその間の記憶がないらしい。亜矢子の部屋には多重人格に関する書物が積まれていた。

安藤シリーズを『リンクがあるから順番に読んだ方が良い』という情報通りに、一気読みしたところ、徹底的にダメージを受けてしまい、それ以来苦手な浦賀作品です。
この作品はシリーズ外で、なかなか評判が良く『森博嗣氏激賞!!!』という帯の惹句にも興味が沸いたので、手に取ってみました。

香奈子の彼氏、貴治のキャラが、今までの作品ではお目にかかれないタイプだったので、とても新鮮。
浦賀作品特有の、じめじめどんよりな雰囲気が緩和されるかと思いきや・・・彼が主人公ではなかったのね。
中盤からは、いつもの浦賀作品でした。

テーマは『解離性同一性障害』。
このテーマを、とても軽く扱っていることには目をつぶるとして・・・。
結論で「実は多重人格だった」という真相が明らかになる手法は、ミステリにはよくあること。
ただ、この作品では初期の段階から、その事実を明らかにしています。
これで一体、どうやって驚かされるのか・・・?興味はそちらの方へ。

いや~見事に騙されました。
早い段階で疑いはあったのですが、いろんなエピソードが入り込むにつれ、曖昧なまま放っていたのです。
なので、他の人なら気付いたかもしれません。
終盤までは、人物の描写などで不満があって、「この著者、こんな下手だったっけ?」と訝しげに感じていたのも、すべてみんな伏線でした!
とてもよく練られた構成です。

今までの浦賀作品は、たとえどんな驚きの真相でも、読み返す気力は残っていませんでした。
でも本書は再読すると、とてもせつないお話が浮かび上がってくるのです。
ラスト一行は、ベタながら印象深いです。

毎度おなじみ、思わず顔をしかめてしまうエピソードや、破滅に向かっていくストーリー展開も考慮して、評価は星一つ減点。
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 2005年8月~

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