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『アリス・ミラー城』殺人事件/北山猛邦 ★★★☆☆

ルイス・キャロルの作品にちなんだ不可解な城に探偵たちが集められた。
ある者は密室状況下、巨大な鏡の上で顔を溶かされた死体となり、ある者は合わせ鏡の部屋で殺され、犯人は目撃者の眼前で消失する。
館内のチェス盤からは殺人の度に駒が1つずつなくなって・・・。
不可能犯罪に込められた驚くべき思念とは!(裏表紙より)



<君は最後から三番目辺りのもっとも目立たない殺され方をするといいね>

「著者のことば」が、麻耶さんっぽくて少しワクワク。
こんなド直球のミステリを読んだのっていつ以来だろう?
気合いを入れてじっくり取り組んでみました。

文章はとても読みやすく、芸術論も頭にすんなりと入ってきます。
キャラの描き分けもバッチリで、混乱の心配もありませんでした。
この作家さんとは相性が良いかも。
これより前の作品があまり良い評価を得てないので、そちらを読むことはないだろうけど。

次々と殺されていく探偵たち。
自分が犯人ではないということは、残りの誰かが・・・!

複数の視点で話が進むので、こちらも犯人の見当がつきません。
疑心暗鬼に陥り、パニックになる人物もいれば、冷静に推理を続ける人物もいます。
作中に、物理トリックの脆弱性やらリアリティの有無やらを議論するシーンがあるのですが、どうして著者自らハードルを高くするのか不思議。
まぁ、小粒でも私好みのトリックでしたが、すっごく期待しちゃいました。

破滅型のストーリーなのですが、ラストの仕掛けで後味の悪さが軽減されるようになっています。
私は最初に違和感があったのに、その後いつの間にか騙されて、最後に「やっぱりかい!」と、完全に翻弄されてしまいました。
この仕掛けは前例があるので別として、そのミスリードがお見事。
再読すると、明らかに2箇所「巧い!」と思うシーンがありました。完敗。
でも、怒り出す読者がいるのも納得ですね。

『そして誰もいなくなった』と『鏡の国のアリス』がモチーフなのですが、これが読後に違った効果をもたらします。
無意味な小道具や設定が気になったので評価は星3つですが、なかなか読み応えがあり、楽しめました。

穴/ルイス・サッカー ★★★★☆

前から読んでも後ろから読んでも同じ名前の少年、スタンリー・イェルナッツ(Stanley Yelnats)
彼の家系は代々ついてなくて、いつもまずい時にまずいところに居合わせてしまうらしい。
ある日、無実の罪で逮捕され有罪判決を受けたスタンリーは、グリーン・レイク・キャンプへと移送されることに。
そこは名前とは正反対の水のない枯れた湖で、少年たちは毎日ひとつずつ、大きな穴を掘らされていた。


<それもこれも、あんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒のひいひいじいさんのせいだ!>

冒険小説にミステリさながらの見事な伏線がプラスされた作品。
読書中はめちゃめちゃノドが乾きました。

穴掘りの名目は、「人格形成」のため。
毎日、陽が昇る前に起床、穴の縦横がスコップの長さになるまで掘り続ける。
キャンプから百マイル四方にわたり、水がないため、逃げ出すこともできない。
スタンリーが「めちゃくちゃツイてないくせに、いつでも希望を失わない」少年なので、過酷な状況でもあまり悲壮感は漂ってなくてホッとしました。

イェルナッツ家の呪いの元凶や、無法者のケイト・バーロウの過去の物語が、所々に挟まれています。
印象に残ったのは、黒人男性のタマネギ売りと、白人女性の教師との恋。
たった2ページほどにサラッと書いてあるエピソードなのに、これがとっても切ない。
そして、無駄な描写が無いのでは?と思うほど、どれも真相にしっかり結びついているのです。

一度読んだだけでは気付かない伏線もあって、緻密な構成に驚きました。
装丁がネタバレギリギリのような気もしますが・・・。
勧善懲悪の結末も爽快です。

ディズニーで映画化されたのですね。
所長役がシガニー・ウィーバーって、ハマってるかも。

片眼の猿/道尾秀介 ★★★★☆

「音」に関する特技を持っている私立探偵・三梨。
この特技を使い、産業スパイの調査を始めるも、殺人事件に巻き込まれてしまい・・・?


<なあ、猿がつぶした右眼は、何だったと思う?>

まず、冒頭の「どうして犬は」でドン引き。
このネタもやっぱり使うのかい、と。
でも、そこからの物語の展開は見事でした。

帯は確かに大げさだけれど、「100%見抜くのは不可能でしょう」の惹句は的確でした。
あからさまな伏線といい、冴えない殺人事件といい、90%くらいは容易に予想できる範囲のミステリです。
おかげで、終盤までは信じられないくらい退屈でした。
でも、著者が一番隠したくて、一番伝えたかったのは、ラストの真相だったのですね。
これ1つで、それまでの見方や感じ方がガラリと変わってしまい、驚きと同時に何とも言えない気持ちになりました。
真相は中盤でちゃんと記述されているにも関わらず、勝手に騙されてしまったのです。
(前もって「どうして犬は」を単品で読んでいた方が騙されやすいのではないかな。)
読書中と読後の私のテンションの差は大きかったです。

燃える地の果てに/逢坂剛 ★★★★☆

1966年1月、スペインのパロマレス上空で空中給油を行っていた米国空軍の2機が衝突、墜落炎上。
積んでいた核爆弾4基を村内に落としてしまった。
そのうち3基は発見され回収したが、残りの1基が行方不明に。小さな村は騒然となる。
1996年1月、新宿のバーの経営者・サンティこと織部まさるは、ギタリストであるファロアナと共に、ギター製作者エル・ビエントの工房があるパロマレスを訪れる。


評判通りの面白さです。
700ページもの大作なのに、夢中になりました。

行方不明の核爆弾。
爆発の可能性はないが、放射能漏れの危険性は否定できない。
もし、ソ連側に爆弾が渡ってしまうと、アメリカは軍事機密を知られることになる。
何とか秘密裏に爆弾を回収しようとするアメリカ側と、謎のビラや地下のラジオ放送で状況を知り、不安に駆られる村民。
そんな中、パロマレスに潜入していたソ連のスパイが活動を始める。
この「一体、誰がスパイなのか?」という謎が、ミステリ色を濃くしています。

1966年の核爆弾紛失事件と、30年後のサンティとファロアナの物語。
この2つが交わった瞬間、驚きの真相が判明します。
私の場合、驚くべきシーンをうっかりそのままスルーしてしまい、後で読み返して「あああ!」と。
伏線が大胆に張られているのに、何の違和感も与えないプロットは見事です。
一覧表があるほど登場人物が多いし、ほぼ全員外国人だし、スペインにもギターにも全く興味がない。
苦手な要素がたっぷり詰まった作品なのに、とっても面白かった。
文章が簡潔で読みやすいのです。
逢坂さんは、ハードボイルド作家で有名なので敬遠していたのですが、他の作品も読んでみよう。

事前に情報を入れていなかったら、間違いなく星5つの評価だったと思います。
でも、その情報がなかったら、こんな分厚い小説を手に取ることもなかったでしょう。
1999年の「このミス」で2位、当時絶賛されたそうです。
なぜ、その時に読んでいなかったのだろうか~~悔やまれる~~。
一番驚いたのは、これが実際に起こった事件を背景に書かれたということ。
ラスト一行にため息です。

シネマ・フェスティバル/永田俊也 ★★★☆☆

「生徒は飯の種を提供してくれる客」と割り切り、淡々と仕事をこなす高校教師・西沢。ある日、大学時代の経験を買われ、部員3名の映画研究会の顧問を頼まれる。そこへ「女優になりたい!」と乗り込んできたスケバン新入生・恵美。最初は全く乗り気じゃなかった西沢も、恵美の気迫と、大学の映研の仲間で現在若手プロデューサーである裕美子に感化され、だんだん情熱を取り戻していく。そして、彼らは全国高校シネマ・フェスティバルへ参加することに。

思ったより、平凡なストーリーでした。
やる気ゼロだった西沢が映画制作に夢中になる姿や、恵美の数々の乱闘シーンや女優としての顔を見せていく過程には、とても惹きつけられました。
でも、この2人以外の仲間の存在が薄くて、物足りないのですよね。
西沢と父親のエピソードも中途半端だし、ラストの裕美子の心の動きもあっさりしすぎているような。
似た設定の『2005年のロケットボーイズ』が面白すぎたのかも。

天使が開けた密室/谷原秋桜子 ★★★★☆

5年前に行方不明になった父親を捜すため、アルバイトに励む女子高生・美波。バイト先でトラブルに巻き込まれ、クビになったあげく、60万円の借金を背負うことに。そんな時、知り合いから「寝てるだけで一晩5千円」というおいしいバイトを紹介される。しかし実は、葬儀会社の手伝いで、病室で亡くなった人を地下の霊安室まで運ぶという内容だった。その上、密室殺人事件の容疑者にまでされてしまい・・・。

元々、2001年に富士見ミステリー文庫から刊行された作品で、ラノベ系ミステリです。

深夜の病院での遺体を運ぶバイト。
連絡用にと渡された携帯の着メロが「ゲゲゲの鬼太郎」で、これには笑いました。
遺体は重いし、時には血を吐かれるし、正社員にはイジメられるし、とても過酷。
でも、その「呼び出し」はバイト料プラス3千円ということで、美波は頑張るのです。
(呼び出しがなければ、家で待機するだけで5千円。つまり、寝ているだけで5千円。)
バイトといえど、美波の死者に対する敬意や接し方はとても好感が持てます。
そして、ある晩、霊安室で発生した殺人事件!
衆人環視の密室の中、犯行が可能なのは美波だけ!?

美波は事件に巻き込まれるだけで、実際に謎を解くのは近所に住む大学生・修矢。
無愛想で性格が悪いんだけれど、とびきり美形の修矢。
高校の友人で父親が警部の直海、家が大金持ちのかのこ。
この設定がいかにも少女マンガ風でベタなのですが・・・。
ミステリとしては、全体的に地味で犯人当ても簡単です。
だけど、「犯行の動機」は予想外でした。
ここで伏線が効いてくるのですね。
一番気に入ったのは、プロローグ。
読後、1ページ目に戻った瞬間、じ~んとなりました。
「そういうことか・・・」って。
いろんな意味を指しているタイトルも秀逸。
美波のある行動が、真相と深く結びつく展開は見事です。
とてもライトな作風なので、書き込みも足りないし、現実的ではないシーンも多々あります。
でも、記憶に残るミステリでした。
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 2005年8月~

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