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漆黒の王子/初野晴 ★★★★★

ある日、怪我をした<わたし>は暗渠(石造りの下水道跡)で<王子>に助けられる。その暗渠では、<王子>を中心に、<時計師>など中世オランダの職業名を持つ7人の浮浪者が暮らしていた。上の世界では、暴力団内で組員が眠ったまま死に至るという奇妙な連続殺人事件が発生。ガネーシャと名乗る犯人の要求はただひとつ。『彼ら全員の睡眠を私に差し出すこと』
第22回横溝正史ミステリ大賞受賞第1作。


<この世には、どんなにひどい苦痛や不幸を抱えても、犯罪だけは起こすまいと必死に生きているひとがたくさんいるだろう。
でもわたしには無理だ。>


私はいじめや暴力団同士の抗争をテーマにした作品が非常に苦手です。
全体的に暗くて人が無意味に死んでいき、思わず天を仰ぐほど救いのない展開も全て苦手。
・・・しかし、この評価は仕方ない!
満足感で一杯です。

前作『水の時計』と順番に読んで良かったです。
著者のスタンスをある程度理解してからの方が、より胸に迫るものがあるだろうと感じました。
どちらにも共通する感覚は「痛み」です。

物語は暴力団員である秋庭と水樹(上の世界)と、暗渠に迷い込んだ<わたし>(下の世界)の視点で交互に進みます。
上の世界では殺人事件を発端とし、犯人探しや報復で次々と人が死んでいくのですが、暴力描写が過激でまともに読めませんでした。
そして下の世界では、暗渠の住人たちと<わたし>との奇妙な触れ合いが。
どちらも心に傷を抱えている人物ばかりで、読み進めるにつれ、胸が苦しくなりました。

この下の世界が上の世界とどうつながるのか?
眠ったまま死に至る原因とその方法とは?
ガネーシャの正体とは?

謎がとても魅力的で最後までグイグイ引っ張られます。
途中、エピソードが紛らわしかったり、唐突に感じる展開もありますが、読後には気になりません。
筆致はさほどでもないのに、いつの間にか惹き込まれてしまいます。
<わたし>が全てを思い出し、過去を語るシーンは圧巻。
全ての設定が著者の緻密な計算で成り立っていることに気付かされるのです。
前作でも感じましたが、伏線の張り方が見事!

全てがフルスピードで破滅へと向かっていく中、ラスト一行に救いが。
強烈な余韻を残す作品でした。
この切なさはきっと忘れられない。
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 2005年8月~

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