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死者のための音楽/山白朝子 ★★★★☆

「長い旅のはじまり」
ある日、腹に小刀が刺さった少女が寺を訪ね、旅の途中に襲われ、父親が殺されたと和尚に語る。少女は回復後、しばらくして妊娠に気付くのだが、全く思い当る節がない・・・。
「井戸を下りる」
幸太郎は、高利貸しである冷徹な父を怒らせてしまい、慌てて井戸の中に隠れることに。そこには、美しい女性が暮らしていた。日が経つごとに、彼女に惹かれていく幸太郎。しかし、彼には父が決めた縁談が待っていた・・・。
「黄金工場」
工場に勤める千絵ねえちゃんに会いにいこうと、近道である森の中を歩いていた僕。工場の廃液が貯められている場所の近くで、黄金のコガネムシを拾う。母にコガネムシを見咎められ、拾った場所まで案内すると、他にも様々な昆虫が黄金に変化しているのを発見する・・・。
「未完の像」
仏師を訪ねてきた貧しい身なりの少女。仏像を彫りたいと頼む少女は、近くの木片で見事な小鳥を彫る。師匠にはその気がないことを少女に伝えると、なんと弟子の私に教えてくれと言う。彼女は罪人で、捕まる前に仏像を一体、完成させたいらしい・・・。
「鬼物語」
昔、戦の犠牲者から鎧刀を剥ぎ取り、売り払った金で花見に興じていた村人たちが、何者かに殺された。その後、その「呪われた村」では、山に入った子供たちの首が川に流される事件も起き、村人たちは熊の仕業だと話し合い、山を焼き払う計画を立てる。しかし、花見の事件で1人だけ生き残った祖父は、「あれは鬼の仕業だ」と怯えるのだった・・・。
「鳥とファフロッキーズ現象について」
ある日、屋根に引っ掛かっている大きな鳥を発見した父と私は、その鳥を家で飼うことにした。鳥は不思議な力を持っていて、私や父が欲しいと思っているものを取ってきてくれるのだ。そんな中、父が銃で撃たれ殺された。鳥はあまり私の前に姿を現さなくなったけれど、相変わらず私が欲しいものを届けてくれた・・・。
「死者のための音楽」
小さい頃から耳が遠かった母は、昔、川に落ちた時に聞こえた音楽に魅了された。その後、その曲を必死に探したけれど、どこにも見つからなかった。でも、父の運転する車で事故に遭ったあの日、母は再びその音楽に包まれたのだった・・・。


<何かよくないことが、これから起こるぞ>

有名作家が別名義で書いたという短編集。
読み始めると、その正体はだいたい予想がつきます。
「鳥とファフロッキーズ現象について」なんて、そのままでしたから。
『銃とチョコレート』でも気になりましたが、文章に無意味なひらがなが多いのですよね。
両方とも、装丁は祖父江さんだし。
(この装丁も非常に凝っていて、栞に一瞬、ギャーっとなりました。)

好みだったのは、「黄金工場」「鳥とファフロッキーズ現象について」
「黄金工場」はゾクゾクする展開で、「鳥と~」のラストには感動しました。
どの話も心に沁みるような言葉や表現が溢れていて、余韻が半端ではありません。
乙一作品のコワ切なさが好きな方には、絶対オススメです。
以下、真相に触れています。OKな方は【】を反転(ドラッグ)させてご覧下さい。
「長い旅のはじまり」輪廻はともかく、小刀があーだこーだで妊娠したってのは、少し下世話に感じた。他になかったのかな。
「井戸を下りる」井戸の女性は幸太郎の母だと予想していた。昔一緒に遊んでいた子供が、普通に男の子だと思ってたから。
「未完の像」小鳥に命を吹き込むことができる、という伏線があったのに、男の子にも驚いたし、処刑されたのが身代わりだったことにも気付かなかった。
「黄金工場」お父さんの浮気相手に驚いた。千絵ねえちゃんのあの台詞が切ない・・・。唯一、飼い犬が無事で良かった。
「鬼物語」双子の話から、祖父の話、母の話へと展開していく構成が好き。とにかく、鬼が怖い。
「鳥とファフロッキーズ現象について」ラストの画が目に浮かぶよう。動物モノには弱い。
「死者のための音楽」これも幸せの形なんだな、とじ~んときた。
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 2005年8月~

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